台風で空き家の屋根材が飛び、お隣の車や窓を傷つけてしまった―
もしこれが自分の所有する空き家だったら、どのような責任を負うことになるのでしょう。今回は、空き家所有者として知っておきたい法的なポイントを、民法と空家対策特別措置法の両面からご紹介します。
民法717条「工作物責任」とは
建物の設置や管理に欠陥(瑕疵)があり、それが原因で他人に損害を与えた場合、民法717条に基づいて損害賠償の責任が生じます。
この条文の特徴は、「過失がなかったから責任を負わない」とは言えない点です。通常、住んでいる人(占有者)が責任を負いますが、占有者が「損害を防ぐための注意をしていた」と証明できた場合は、所有者が責任を負うことになります。そして所有者には、占有者のような「注意していたから免責される」という逃げ道が一切ありません。
ここで重要なのが、空き家には住んでいる人(占有者)がいないということです。占有者がいない以上、実質的には所有者がそのまま責任を引き受ける形になりやすく、「気づかなかった」「劣化していることを知らなかった」という言い分は、責任を免れる理由にはなりません。むしろ、経年劣化による不具合こそ、この条文が想定している典型的なケースです。
どこまで賠償の対象になるのか
屋根材が車に当たって傷をつけた場合の修理費はもちろん、ケガをさせてしまった場合は治療費や慰謝料まで賠償の対象になり得ます。被害の規模によっては、所有者の想定をはるかに超える金額になることもあります。
行政からの「管理不全空家等」「特定空家等」指定にも注意
民法上の責任とは別に、空家対策特別措置法に基づく行政上の措置も存在します。令和5年12月の法改正により、適切な管理がされず将来「特定空家等」になるおそれがある空き家は「管理不全空家等」として、より深刻な状態の空き家は「特定空家等」として、自治体から指定を受ける可能性があります。
指定を受けると、まず助言・指導が行われ、それでも改善されない場合は勧告、さらに命令、最終的には自治体による代執行(所有者に代わって解体等を行い、費用を所有者に請求する措置)へと進むことがあります。
私も実際に行政代執行(緊急代執行)を行った経験があります。
また、勧告を受けた状態で固定資産税の課税時期(1月1日)を迎えると、住宅用地の税制優遇が外れ、固定資産税が大幅に上がる場合もあります。
つまり、台風による被害が直接のきっかけにならなくても、日頃の管理状況そのものが行政上のリスクにつながるということです。
トラブルを防ぐためにできること
民法上の責任も、行政上の指定も、根本にあるのは「適切な管理がされているか」という一点に尽きます。台風前のチェックや日頃の巡回は、近隣トラブルだけでなく、こうした行政上のリスクを避けることにも直結します。
ご自身で定期的に見に行くのが難しい場合は、空き家サポートデスクの巡回管理サービスもご検討ください。状況を写真付きでご報告し、必要な対応のご相談にも対応しております。

